世界初演・新作共作ファンファーレはどのように作られたか?Hideaki MIURA, Yousuke FUKUDA, Rika ISHIGE, Makoto ONODERA “Co-composer”
20th Anniversary commissioned fanfare for the VIVID BRASS TOKYO “World premiere”

ファンファーレのタイトルについて

この作品はVIVID BRASS TOKYO創立20周年特別公演のために作曲された。
作曲は4名の作曲家による共作という大変珍しい方法で進められたが、その作曲方法を含め構成などはすべて作曲家である石毛、小野寺、福田、三浦と指揮者である松元で相談しつつ決定された。「企画としても斬新なアイデアに溢れ、かつ音楽的であること」というコンセプトを掲げ作曲は開始されたが、楽曲の源になるモティーフ(主題とも呼ばれる)は、初回打ち合わせの場で作曲家が偶然持ち合わせていた五線紙に2、3小節づつリレー形式で書き上げる形で作られた。
その後は決められた編成の中、担当制で2日毎に約8小節ずつ作曲ならびにオーケストレーションが進められ、その作業もリレー形式(次回担当者は指名制)で行われた。文学ではこのような創作方法を連作(共作)と呼び、すでに確立された創作方法ではあるものの、音楽における作曲手法としてこのような方法は大変珍しく、各作曲家の高い能力はもちろんのこと互いの信頼がなければ成り立たない作曲方法であることは言うまでもない。
曲名は「三浦のM、小野寺のO、VIVID BRASS TOKYOのT、石毛のI、福田のF」いう風に作曲家4名とVBTの頭文字から「MOTIF(モティーフ)」と名付けられ、モティーフが作られるところから終止線を引くまでのすべての過程を、4名の作曲家が共に行ったという友情の証と、VBTの輝ける未来への願いが込められている。

『世界初演・新作共作ファンファーレはどのように作られたか①』

とうとう「VIVID BRASS TOKYO創立20周年記念特別公演」が来週に迫りました!

チケットはもう手元にありますか?
そこで、特別公演で世界初演される作曲家4名によって共作された新作ファンファーレの製作秘話をここでアップしたいと思います。
三浦秀秋、福田洋介、石毛里佳、小野寺真、各氏のプロフィールはこちら


演奏会にいらっしゃる方は演奏をより楽しむために、それ以外の方もこれを読むと、きっと「今まで金管バンドに興味がなかった方」も演奏会でこの作品を聞きたくなると思います。
さて、今回の新作ファンファーレは私の呼びかけにより、日本を代表する若手新進気鋭作曲家である石毛里佳さん、小野寺真さん、福田洋介さん、三浦秀秋さんの4名によって作曲されました。
この4名は、私が普段から無理難題を押し付け迷惑をかけている方々ですが、それにも懲りずこんな私と今でもとても良くお付き合いしてくださっている素晴らしい仲間です。
作曲をするにあたり「どのような作品にするか」「どのように共作するか」も含めて打ち合わせが必要なのですが、4名は普段から仲が良いこともあり、楽しく良いアイデアをひねり出そうということで、9月8日新宿にある九州料理のお店で打ち合わせが行われました。
その場ではお互い美味い酒を酌み交わしながら色々なアイデアをぶつけ合いました。
4分ほどの作品を4等分して1分ずつ作曲する案、テーマ作り、スケッチ、オーケストレーション、監修など4つの作業に分けて作る案などなど…
最終的には「普段から信頼し合っており、意思の疎通の取れている4名だからこそできる方法があるのでは」という意見に辿り着き「誰もが思いつかないような方法」を使って合作をしようということになりました。
そこで、美酒の力が発揮したのはその時です。
「せっかくだからテーマ(作品の主要な旋律)もこの場で数小節ごと書いていき、リレーしてテーマを作ろう」という話になりました。
松元から「皆さん作曲家なんだから飲み会にも五線紙くらい持ってきてるでしょ?はい、出して出して!」という声に、誰も五線紙を持っていないだろうと思われた時、小野寺さんがカバンからゴソゴソと五線紙を出し…
何とか、五線紙が準備出来たところで、みんなで書き始める順番を決めて、リレーでのテーマの作曲がその場で始まりました。

 

『 世界初演・新作共作ファンファーレはどのように作られたか②』

作曲家から手渡された印刷スコアはこれまで何回も見た事ありますが、作曲家が目の前で創作活動をするところを見るのは初めてでしたので、酔っ払いながらもとてもその光景に感動しました。
しかも、さすがはプロ!
美酒で顔を赤らめながらも、五線紙に向かう目つきは瞬時に作曲家のそれに変わり、書き進められていきます。(写真はその様子です)
その時にとても面白かったのは、それぞれの作曲の個性や作曲スタイルをその場で見ることが出来たこと。
福田→石毛→小野寺→三浦の順番で書き進んでいったのですが…
福田さんは…ものの1、2分で「ほい、こんな感じで!」と書き上げました。
続く石毛さん…色々独り言を言いつつ、時折チャーミングな笑顔とは裏腹の何か企んでいるような顔をしながら書き進めていきました。
3番手の小野寺さんは…まず2人のテーマを見て、「これは〇〇旋法ですね?」など難しく分析を一通り語ります(笑)
その後、作業に入ったのですが、小野寺さんは書いては消し書いては消し、丁寧に推敲を繰り返し15分ほどの時間をかけてバトンを渡されました。
アンカーの三浦さんは…ささっと書いた後、微修正を何回か繰り返し…一通り書いた後に見直しつつ仕上げられるタイプに見えました。
そんなこんなで30分ほどの時間をかけ、ファンファーレの主要テーマとなる旋律が出来上がりました。
その後は、このテーマをどうやってオーケストレーションしていくかの相談が始まりました。
あれやこれや話し合った結果、1番面白くて共作らしい共作が出来る方法は
「8小節作曲及びオーケストレーションして次の作曲家に渡そう!」
というアイデアに落ち着きました。
そして、そこでルールも決められました。
以下ルール
締め切り:10月19日
最終打ち合わせ:10月10日
曲の長さ:3~5分(流れによって自由に)
編曲方法:今日決定したモティーフを使って連作していく。
書く順番:三浦さん→石毛さん→福田さん→小野寺さん
その後は指名制。
指名の方法:特に決まりはないが、指名された人が多忙の場合は
順番を考慮する場合もあり。
提出方法:書き上がった部分をその都度FBにアップしていく。
個人の締切:持ち回りで8小節以上進める事が望ましい。
出来れば、オーケストレーションまで。
ここまで打ち合わせ、テーマの作曲、ルール作りが出来れば美味い料理(この日は九州料理をいただきました)と美酒に酔いしれるのみです。
最後は皆さんで良い曲の完成を目指し記念撮影。

 

『世界初演・新作共作ファンファーレはどのように作られたか③』

その後は「お忙しいであろう作曲家がよくこんなに作曲する時間があるな!」と感心するほど順調に作曲が進み、約1ヶ月でリレーを終えました。
Facebook上でリレーしていくスコアを見ることが出来るのですが、出来上がってくるスコアの部分が、とてもバイタリティーに満ちたスコアで、作曲家の皆さんが今回の企画を興味を持って、自身が楽しみながら進めてくださっていることが感じられたのは大きな感動でした!
また、リレーというスタイルは簡単なようで難しく、この信頼しあえる仲間だからこそ成し得る作業であること、そして実力があるもの同士だからこそ出来る仕事なのだということに改めて4人に感謝の気持ちを抱きました。
さて、月が変わり10月10日祖師ケ谷大蔵で最終打ち合わせが行われました。
これは、エンディングを決めるためです。
曲を終えるのはリレー形式で作曲する際に最も難しいポイントらしく、この打ち合わせはノンアルコールで(笑)しっかりと話し合いが持たれました。
ここでは、お互いの作曲部分の整合性や、エンディングの方法、表記法の統一など、極めてシビアな話し合いになりました。
最後に締切までの最後の仕事である、細かい修正とタイトル付けの方法も検討されました。
そして、またまたゴールまであとちょっとという事での景気付けに祝杯を挙げました。
作品は無事に締切前に仕上がり、素晴らしいタイトルも付けられました。
このような珍しい共作にふさわしい本当に良い名前です。
さあ、皆さん作品に興味を持っていただけましたか?
これは音楽会に足を運ぶしかありませんよ!
皆さんと会場でお会いできることを楽しみにしております!
もちろん当日は作曲家4名もいらっしゃいます(^^)
レポート:松元宏康